【歌日記】1×1=∞

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中原中也は僕の頭の中にメロディーを降らせてくれました。
その奇跡の中で創作したのが「詩人・中原中也の世界〜在りし日の歌〜」
このひとり舞台を、僕は2016年から続けてきました。

昨年は中也の故郷、念願の山口県の湯田温泉で開催。
音楽スタイルは「弾き語り」でした。

中也として、その時に見えた藝術の形、愛する人。
自然の雄大さによって変わる、僕の歌。
この感覚を共有できる人は、多分いないなと思ってました。
なぜなら僕自身、その時にどうなるかが全く想像がつかないんだから。

「1×1=∞」のお話を神田将さんから頂いたとき
僕は「中也がやりたいです。」と、自然と言葉が出ました。

昨年山口県宇部市で初めて神田さんと共演させていただき、感動。
どこまでも共演者により沿ってくださる視野の広さ、集中力に脱帽。
参加してくださった合唱団の皆さんへの的確なアドバイス、
そして皆さんのモチベーションを最高潮に創りあげるカリスマ性に
圧倒されました。

そんな実体験があったので、
神田さんならもしかしたら・・と、
そんな想いからとっさに言葉に出たのかもしれません。


ミュージカル「ビリー・エリオット」に出演中も、
休演日や空き時間をみつけては
中也の構成を頭の中に描きなおし、
神田さんへの資料を作っていました。
何度も、何度も。

僕の頭の中ではピアノの音でしか鳴っていなかったメロディ。
それが一体どんな姿になるのか…。


今回のリハーサルは2回。

この2回で、どれだけ妥協なく中也を表現できるのか・・

色々な不安が頭の中をよぎり、初合わせへ。


神田さんが作ってくださった序曲を聴いた瞬間、
僕の頭の中の全てが真っ白になりました。


あ、僕の創った音を大切にしてくださってる 。

「盲目の秋 I」のメロディーラインがギターの音色と共に自由に戯れ、
今回は使われていない「生い立ちの歌」のモチーフが生き生きと踊り出し、
僕の大好きな「幻影」のモチーフが今まで聴いた事のないくらい伸びやかで、
壮大で、愛おしいものになった「序曲」。


そして本編に入り、サーカスを歌い始めた時に確信しました。

「中也」として、見える景色に集中しよう。
そこに神田さんは必ずついてきてくれる。と。


二度と同じにならない僕の呼吸、景色、音色。
それを全て受け取り、共に走り出してくれる音。

中也の悲しみ、喜び、狂気。
全ての感情が繊細にオーケストレーションされている。
神田さんと共に走り出す世界には、∞の可能性が広がっていました。


この稽古があと1回か…。
いや、稽古ではなく、僕が中也として、この音の世界の中で生きることができる喜びを感じる時間。

それが本番を合わせて、あと数回で終わってしまう。


そんな寂しさがじわじわと訪れながならも、
「中也」として生きる事の喜びを実感できる時間でした。

 



そして、本番の日。

照明、音響の皆さんの協力のもと、
さらに中也が立体的に浮かび上がりました。

いざ皆さまにお披露目する時間がくると、
緊張で身体は強ばり、少し吐き気がします。

そんな中、神田さんは袖で「行くぞ、中也。」と声をかけてくれました。

どこまでも、共演者想いな方です。
一気に集中力が高まり、中也が降りてきました。

そこからは、ひたすら中也として駆け抜けた2回公演でした。



今回この難しい状況の中、お越しいただいた皆様。
そして主催の東京労音様、豊洲シビックセンターホール様。
このような機会をいただき、本当にありがとうございました。


また皆様の前で、神田将さんのエレクトーンとともに、
中也を表現できる日を楽しみにしています。
その時はまた会いに来てくださいね。
お待ちしています!

歌日記でした。












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