【歌日記】「1×1=∞ 神田将・中井智彦ON STAGE」~2020年振り返り編~

詩人・中原中也を表現することは、僕のライフワークです。
藝術という形のない世界を、中也の生きた軌跡で表す事ができる。
その空間を作りたくて、僕が詩に曲をつけて作った舞台
『詩人・中原中也の世界〜在りし日の歌〜』

中也を演じるといつも、
「俺はここまで書き続けた、お前はどうなんだ?」
と問いかけられている気がするんです。


エレクトーン奏者の神田将さんから今回の「1×1=∞」のお話を頂き、
"中也を演じたい"という言葉に、神田さんは快諾してくれました。

僕が作った曲は、コードも独特。
詩の言葉を中心に考えているので、メロディーの動きが乏しい。
もともとピアノ1本でやることしか考えていなかったので、どんな音が入るか、僕自身想像もできていない。

と、いろんな不安がある中、神田さんとのディスカッションの日々が続きました。

「ビリー・エリオット」公演中も、
この詩のイメージはこんな感じ・・
照明の色はこんな雰囲気のイメージなんですが・・
愛し、聖母のような存在の女性長谷川泰子さんが・・
息子の文也が・・
といった資料を神田さんに何度も送らせていただき、中也のことを改めて考え、
神田さんの編曲という可能性を頭の中で想像し、どんな形で表現できるのか・・。


「ビリー・エリオット」が千穐楽を迎え、
11月18日、初めて神田さんのエレクトーンとの合わせ。

実はこの公演、音を合わせる稽古が2回しかなかったんです。

神田さんのエレクトーンは僕の歌をより一層引き立たせるオーケストレーション
そして演奏技術で包んでくださるのですが、
何せ今回は中井作曲のオリジナルです・・。ドキドキしますよね・・

そんな中、神田さんが創ってくださった序曲を聴いた瞬間に、
なんの心配もない事に気付かされました。

どれだけ僕の音源を聴いてくださったのでしょうか。
その中で、僕の創ったメロディーを尊重し、ダイナミックに、そして繊細に。
ピアノの音色でしかなかった音が、神田さんによって彩られたオーケストレーションによって
幾重にも立体的に表現された世界に。

「これ・・僕が求めていた世界だ。」

常に舞台に立っている中也を見続けてくれている神田さんへの信頼により、
演じることに集中し、今まで見ることの出来なかった中也の核に触れることができる。

そして本番に臨む際に、舞台袖で「行くぞ、中也」と声をかけてくれる神田さん。
僕は中也として、神田さんは中也が感じた"藝術"の象徴として舞台に立てた喜び。


「中井さんをピアノから解放したかった」
と本番中のトークで神田さんがおっしゃってくださいました。

解放してくださった事で見えた景色、一生忘れません。

また絶対に再演したい。
東京だけでなく、山口でも。
是非、また僕らの∞(無限大)の可能性の中に生きる中也。
その時は、ぜひ観劇にいらしてください!

2020年11月21日の話。

歌日記でした。


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