「ナイツ・テイル-騎士物語-」
今回歌唱指導という立場で、音楽監督ブラッドの曲作りを稽古場から間近で見ることができました。
再演なのに、曲作り?って思いますよね。
初演版、コンサート版と楽譜がかなり変わっていて、そのふたつを掛け合わせ、さらに新しい要素を足していく作業が今回の「ナイツ・テイル」でした。
例えば、光一さん、芳雄さんの新曲ソロはコンサートバージョンからの追加されていますが、オーケストラアレンジも変化し、コーラスがプラスされています。
それもその場でアイデアが提案され、それが翌日楽譜になっている・・という感じで、何ともエキサイティングな現場でした。
僕とブラッドで話をしていると、演出のジョンがやってきて、
「あそこの前奏、全然違う感じに変えたいんだけど。例えばこんな感じの・・」
という身振り、手振り、鼻歌がはじまり、一通り聴いてジョンが立ち去った後に、ブラッドが頭を抱えて大きくため息をついて
「変更、大変だけどさ、悔しいのはジョンのイマジネーションはまさにその通りで、効果的だよ・・」と言いながら作業を始める姿を、この稽古期間で何度見てきたか・・笑
ジョン・ケアードの想像力は無限です。
常に何かを思いつき、トライし続ける。
その姿勢に突き動かされる音楽監督、俳優、スタッフ。
みんなが彼の後について、彼にしか見えていないゴールに向かって突き進めるのは、チャーミングで紳士的なジョンの人柄も大きく影響していると思います。
2007年の初舞台「レ・ミゼラブル」でジョンと出逢って、僕は舞台が大好きになりました。
一人一人違うという個性を引き出してくれる彼の言葉。
いい作品を作るためには、それぞれの個性を尊重しつつ、台本に沿わせるのが重要なんだ、と気づかせてくれたジョン。
俳優なんだから、こうするべきだ。
ミュージカルの舞台はこういうもんだ。
オペラなんだから・・。
ドイツリートはこう歌っちゃだめだ・・。
歌について自分の中で悶々としていた僕に
ジョンとの出逢いがこの鬱屈とした考え方を一掃してくれました。
14年たった今でも変わっていません。
一緒にアンサンブルを作っている皆さんもとても熱心で、常に吸収して反映させる。
歌唱指導という立場から、プリンシパルの皆さんの歌も一緒にディスカッションさせて頂くのですが、年下の僕(萌音ちゃん以外ね)の話を真剣に聞いてくださいますし、どんどんと変化していきます。
産まれてくる音楽の息吹を稽古場で感じ、その効果について俳優とディスカッションをしつつ、出演し、一つのピースになり作品と共に走り続ける事ができる。
この機会を与えてくれたジョンには本当に感謝しかありません。
新たな「ナイツ・テイル-騎士物語-」。
最後まで駆け抜けたいと思います!
歌日記でした!