【歌日記】ワタシノコトの創り方

昨年11月。
ミュージカル「ナイツ・テイル」が終演してすぐ、
樋口祥久さんに一緒に舞台を作らないかと提案しました。

僕と樋口君の、自分自身に近い出来事を題材に、
僕たちが歌う理由、踊る理由の確信に迫るような、
そんな物語を書きたい。

二つ返事でOKしてくれた樋口君。
電話で彼の今までの人生をインタビュー。

人の人生って、小説よりも奇なりって言うじゃないですか。
樋口君の話を聞くだけでも充分に一冊の本になる内容を話してくれました。
中でも、
「初めての観劇は、母が『蒲田行進曲』か『キャッツ』どっちがいい?って聞いてきたんですよー。」
は、このまま使わせて下さいってその場でいいました。笑

樋口君とのディスカッション後、一週間程で脚本を書き上げ、第一稿完成。
そこから長濱司さんとのディスカッション。
「M1ワタシノコト」が漠然と僕の頭の中に浮かんできたので、
五線譜に走り書きをし送信。ショルダーキーボードで実践。
この感じ、ショルキー合わないですよね?・・ですよね・・となり、
楽器屋でカホンを購入。M1の大まかなイメージが出来上がりました。
その後は脚本と共に出来上がった歌詞のイメージで長濱君からどんどん新曲が送られてきました。
樋口君の最初のソロ「M2空が語りかけてくれたから」を聴いた時に鳥肌。
まさに僕がイメージしていた景色がメロディーによって広がりました。
「M5尊き世界」の僕の独白もイメージぴったり。日本語が勝手に吸い付いていく音。
長濱君自身、とても楽しんで作曲してくれているのが伝わってきて、嬉しかったなぁ。
唯一書き直しをしてもらった「M3同調圧力」なんですが、
書き直し前の曲もね、実はいい曲なんですよ!
何か機会ができたら皆さんにも聴いていただきたいです笑


ギターの成尾憲治さんもアフタートークで言ってましたが、
「最初に中井さんのライブで「ワタシノコト」を演奏するってなった時に、なんだこの曲?? になりました。」 
という曲、なんです。笑
僕から生まれたメロディーとカホンリズム。
最初は長濱君も『なんだこの曲?』だったはず・・・。
でも、この曲はこんな感じですかね?と黙ってコードをつけてデモ音源を送ってくれる。
ここが、すごく大事で、
最初の一歩で否定されてしまうと、構築が難しくなります。
長濱君は僕の無理難題を、いつも吸収して、一つのカタチにした後にディスカッションしてくれる。
最高のパートナーです。

その後のリハで成尾君とベースの田中啓介さんがコードの中を動き回る事で初めてカタチになった表題曲「ワタシノコト」

初お披露目は9月にやったツアー「Singer Song actor」でした。
表題曲と共にピアノと僕だけのソロ曲「M5尊き世界」もここで発表。

この楽曲をバンドで。
アコースティックギター、エレキギター持ち替え、成尾憲治さん。

あとは、
んーーー、
チェロとかもいいよね?
ということで、実は最初チェリストを探していました。


知り合いのチェリストは皆都合が合わず、
チェロじゃない方法・・
いや、やっぱりエレキベース欲しいよね・・
チェロとエレベの持ち替えできる人とか・・そんな人いないよね・・
と考えていると、ヴァイオリンとエレキベースの持ち替えできる子いますと成尾君。
西原史織さんを紹介して頂きました。
そこから一気に曲のイメージが具体的になり、完成。奇跡の出会いに運命を感じました。
リハから本番まで、毎回セッションをしているようなバンドメンバーの音色。
音を楽しむからこそ、歌詞が生きる。
そんな挑戦ができた、最高のメンバー達です。


樋口君とはリモートで読み合わせを何度も重ねたのですが、脚本は実は第何稿かわからなくなるくらい書き直しいています。

こっちの方が樋口君が言いやすそうだ、
二人で会話すると僕の台詞はこっちの方が伝わるよね、
この台詞、意味わかんないな笑
ナドナド、、
柔軟に対応してくれた樋口君、本当にありがとう。

サイゴン東京公演が終わった時に、
一度スタッフと共にみんなで読み合わせをしたのですが、
「中井さんのことが書かれてなくないですか?」
と指摘されました。

その時点で、僕の独白的な部分は最初の「M1ワタシノコト」を歌う前の皆さんとの掛け合いだけでした。

ここまで樋口君が自分の事を演じてくれているのに、
僕自身の事の核心に触れないなんてダメだ。

そして、沢山の独白を追加しました。

痛くて、触れたくないワタシノコトには、
防衛本能で蓋をしていた自分。
劇中の台詞、
「自分に正直になれてなかったのは、僕の方なのかもしれない」
は、まさにこの時の僕の台詞でした。

辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、
そんな過去を抱えすぎると僕は生きていけない。
だから、無かったことにする。
完全に記憶から消す・・という防衛本能が僕にはある気がしていて、
どうしても思い出せない過去の記憶もあるんです。
その記憶と、しっかりと向き合う事。
それが今回の僕自身が対峙した
『ワタシノコト』でした。

そして、僕の事を応援してくれる幻の存在。

その幻は、僕のやりたい事を否定するではなく、
全部肯定してくれる。
受け止めてくれる。
そんな幻が、僕の頭の中に生まれそうな時期がありました。

でも、
舞台に立ち、
ライブで歌い、
実際に応援してくれているファンの方々との触れ合いによって、
僕はそこに行かずに、今、ここに立ててます。
『人と触れ合う大切さ』
を感じさせてくれて、僕を正常な位置に戻してくれたお客様。
そんな皆さんに僕の感じていた幻を演じてもらう。
この脚本、実はスタッフは反対しました。

でも、
本当の「ワタシノコト」を感じてもらうためには、皆さんの協力が絶対に必要でした。

なので、押し通しました笑

そして観客の皆様が幻を演じてくれたことによって初めて、ワタシノコトがカタチになりました。


この作品は、
中井智彦
樋口祥久
長濱司
成尾憲治
西原史織
upcomingスタッフ
GBスタッフ皆さん
そして、
観客の皆さんが揃う事で産まれた奇跡の公演です。

僕の大切にしていたイマジネーションを、
最高のカタチにしてくれて、
本当にありがとうございました。感謝、感謝です。

配信も是非、楽しんでください。
そして、再演も是非、応援してください。

僕もまた不器用さんに、フェミニンに逢いたいです。

歌日記でした。







 

 


 

ゲスト

  1. ゆき

    ワタシノコト への想いと愛に溢れた歌日記
    更新ありがとうございます^ - ^
    ワタシノコト お疲れ様でした
    昨年 ナイツテイル以降 1年間お忙しい中ずっと向かい合ってきた作品なんですね
    不器用さんとフェミニンさん
    2人の中にやっぱりどこか中井さん 樋口さんの姿が良い意味で重なる事が何度も何度もありました
    樋口さんのキャッツの選択実話だったのですね
    あの出会った瞬間の電気が走ったような気持ち 表情凄くリアリティがありました
    ダンスにも喜怒哀楽表情豊かな踊りやソロ曲
    エレキベースの西原さんの演奏も格好良かったのですがやっぱりヴァイオリンの音色の響きと樋口さんの歌声や踊りとの重なりが美しくて大好きだったんです
    素敵な出会い ご縁があったんですね
    そして 幻の存在… お昼に聞いた時 ありがとうそしてさよならと私達に告げられたように思えて寂しくなっていたんです
    でも夜聴いた時には そのファンはもしかしたら
    不器用さんが自ら創った人々で彼が前に進むために
    別れを告げているのかな?
    だから私達はその誰かなのかも
    と前向きな歌に感じてやっぱりこの曲好きでした
    誰にも振り返りたくない辛かったりする過去ありますよね
    私もあります💦
    でも中井さんの過去をこうして不器用さんの人生として物語の中に存在させてくれた事で私は不器用さんやフェミニンさんのこれまでの人生にとても共感する事が出来てラストの温かさや人と繋がり語り合う事の大切さに改めて気づけましたよ
    そして 不器用さんが歌う曲からは中井さんがいつも大切にしている平和への願いや愛も感じる事が出来て中井さんらしい物語だなぁと思いました
    中井さんの頭の中のイメージ 構想を全て受け取ってくれてひとつの曲を誕生させて そこからディスカッションしながら育てていく
    長濱さん本当に最高の相棒ですね
    そして中井さんと長濱さんの楽曲の世界を物語の中に最高の形で奏でてくれた成尾さん 西原さん
    3人の演奏も最高でした
    5人だから描けた物語に照明や音響でその物語を輝かせてくれたGBの皆様もありがとうございました

    アーカイブ見ていてもうまた ワタシノコト 会いたいなと思っています
    再演してくださいね
    待っています
    ワタシノコト 出会う事が出来て嬉しくて長くなりました
    ごめんなさい💦
    また明日からも前に一歩踏み出す勇気ももらいました
    ありがとうございました

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